とある家の猫の歴史
母ネコ“ナッキー”と家族の物語
今から6年前のある日のことです。
どこから来たのか、一匹の痩せこけた汚いネコが玄関の前で鳴き叫んでいました。人を怖がらないところから、以前は飼いネコだったように見えました。誰かに捨てられてしまったのでしょうか?
その後、気がついたのですが、このネコには少し変わったところがあって、どこかへ行こうとすると、どこまでもついてくるのです。かつて、飼い主に捨てられて置いていかれ、必死に追いかけようとした記憶でも残っているのでしょうか?
うちにはすでに飼いネコがいたのですが、とにかく、かわいそうなので、物置小屋に寝床を作り世話をすることにしました。名前は、よく鳴くのでナッキーと名づけました。見かけは、かなり年寄りのネコのように見えたのですが、しばらくしてから、子供を産んだのには驚きました。もちろん、父親は誰だか見当がつきません。
(右がナッキーです もふもふ)
しかし、その子ネコは育ちませんでした。冬に向かうなかで、寒さのためにカゼをひき死んでしまったのです。が、それで終わりではありませんでした。春になると再びおなかが大きくなり、忘れもしませんが、2012年5月21日、日本でも観測できる金環食があったその日に、今度は、5匹も子供を産んだのです。
メスが3匹でオスが2匹で、メスの1匹は生まれて間もなく死んでしまいましたが、あとは、順調に育っていきました。母ネコ・ナッキーと残ったメスの2匹は、かわいそうですが、不妊手術をしてもらいました。
しかし、その後、1匹ずつどこかへ行ってしまうことになります。最初にいなくなったのは、毛の長いメスネコでした。
そのほかのネコたちは、その後も、しばらくは仲良く暮らしていましたので、毛が長くて足が太く体が一番大きいオスをフットくん、短縮してフッくん、そして、尻尾が少し曲がったもう一匹のオスをカールくん、二毛のメスネコをタマちゃんと名づけました。
(フッくんです)
さて、近所に、このあたりを縄張りにしている強いオスネコがいました。子ネコのあいだは知らん顔をしていたのですが、ネコたちが大きくなっていくにしたがい、フッくんとカールくんを追い払い始めました。
そして、いつしか、カールくんがいなくなり、帰ってこなくなりました。一方、フッくんは、追われても、追われても、必ず、帰ってくるのでした。図体は、大きいのに、気が優しいフッくんは、とても人なつこい性格のネコだったので、生まれ育ったところから離れたくなかったのでしょう。
しかし、そのフッくんも、帰ってくるが、二日に一度、三日に一度になり、もう帰ってこないのかなと心配していると、一週間後に帰ってきたりするようになりました。
近くにはいられないので、うちからかなり離れたところで寝起きしているらしく、すぐには帰ってこれないようなのです。でも、家族の者が、どこそこを歩いているのを見た、というのを聞いて、帰ってこれなくても元気でいてくれるのだと安堵するのでした。
最近では、1週間から10日ぐらいに一度帰ってくるというような状態ですが、おなかをすかして、耐えきれなくなって帰ってくるというふうではないのです。帰ってきても、どこかでご飯をもらえるようになったのか、あまり食べたがる様子もなく、体を擦りつけるばかりで、愛情がほしいために帰ってくるように思えるのです。
さて、この前に帰ってきてから、今日でもう一週間以上たっています。そろそろ、果たして元気にしているかどうか、帰ってきてくれるかどうか、という心配が頭をもたげ始めています。
というわけで、今では、ナッキーとともにここにいるのは、タマちゃんだけになってしまいました。しかし、この親子はとても仲が良く、今でも寝るときもいっしょ、遊ぶときもいっしょです。お互いに体を寄せ合い、これからやってくる冬の寒さを乗り切っていってほしいと思います。
(奥がナッキー 手前がたまちゃん 仲良しです)
ネコたちの生き様を見ていると、そこには、人間ドラマならぬネコドラマが展開されているのを実感しますが、その健気な姿を見て、ますますネコが好きになってしまうのです。
そして・・・・・・
「私達もきっといつか紹介してもらえるにゃ。 たぶん おそらく」
「出演料は ただでいいから めしくれにゃ~」
この世のネコちゃんのお話しでした。 あの世の猫たちのお話しは「こちら」
アマゾンで絶賛発売中!