ファックス先生① ~うちわ 頑張って書きましたシリーズ~
「ただいまー」
普段と何も変わらない家、普段と何も変わらない部屋、そして家族の声、佳代子はいつものとおり学校から家に帰ってきた。
しかし、その日はいつもと何か違っていた。
「何、これ?」
佳代子のなんとも言えない声に母が何事もなかったかのように答える。
「知らないの、ファックスよ。ファックス。」
「知っているけど・・」
佳代子はこれ以上聞くと、いつものようにとてつもなく母の話が長くなりそうなので、ここは普段と何も変わりなくあしらった。
しかし、母はそんな佳代子の気持ちを分かっていたのか突然、少し大きな声で佳代子に話しかけてきた。
「佳代、あのね、このファックスね、佳代のだよ!」
「は!?」
「ほら、佳代、塾行きたいって言ってたでしょ。だからこれ!」
「これすごいんだよ!勝手に問題送られてきて、解答送ったら、細かく添削してくれんだって、久美子ちゃんもやってるみたいよ。ほら、最近久美子ちゃん、めきめき成績よくなってるし。だから、久美子ちゃんのお母さんに聞いたの。そしたら、教えてくれて。でね、申し込んじゃった!そしたらスグきちゃって、最近は便利になったわね。そそ、それでね。その時たまたま、・・・・・・・・」
佳代子はもう母が何を言っているのか分からなかった。
「お母さん。」
「ん?」
「これ、塾じゃないよね」
「まぁ、細かいことは気にしないで。ネ!」
佳代子はあまり成績のよいほうではなかった。勉強のできる子がうらやましく感じていたのも事実で、母がそれにうすうす気づいていたのかもしれないと、佳代子は素直に思った。
「もう、できるの?これ」
「うん、線はつながってるよ。でも、やる前に必ず説明書を読んでくださいって書いてあったから、読んでみたら?はいこれ、説明書。」
「ふーん。」
母から説明書をもらった佳代子はその薄さにちょっとびっくりしながらも、その説明書を開いた。そしてそこには少し大きめな文字で一言
『どんなに間違えても構いません。あなた自身怠けるときもあると思います。それでも、構いません。しかし、これだけは守ってください。あなたに的確なアドバイスをするため、必ず自分の力で解いて、自分の手で答案に解答を記入してください。
それでは、はじめましょう!』
【ジ、ジ、ジージジ】
突然ファックスが受信して問題用紙と解答用紙が送られてきた。
「なに、これ 怖いんですけど・・・・」
「すごいサービスね。マイクでもついてるのかしら。」
母はファックスをギョギョロ見まわしていた、佳代子は気味悪かったが、母の気持ちが正直嬉しかったので、少しむずかゆい気持ちだった。
これが、佳代子とファックス先生との出会いでした。
あまりに暑いので雪です。