ファックス先生③最後 ~うちわ 頑張って書きましたシリーズ~
ファックス先生とのやり取りを開始して半年ほどたったころ、佳代子の成績は、もう上から数えた方が早いくらいになっていました。
佳代子自身もう、すっかりファックス先生のことを信じて勉強を進めていくそんな子になっていました。
しかし、佳代子にはどうしても腑に落ちない点がありました。
(学校のテストは90点くらい取れるのに、なんでファックス先生の問題はいつも60点くらいなんだろう。ちょっぴり悔しい!なんとかファックス先生のテストも90点くらいとってみたい!)
人間なら普通に思うことだと思います。しかし、この時、佳代子は最も大切なことを忘れてしまっていたのです。
もっと正確に言うと、大事なことが見えなくなってしまっていたのです。
(そういえば、久美ちゃん。おんなじのやってたよね。ちょっと答え見せてもらっちゃおうかぁ)
佳代子は、次の日に久美子にファックス先生の話をした。
「別にいいけど、佳代・・・・ ううん。分かった。明日もってくるね。」
久美子は多くは語らなかったが、自分の思いが達成されることで頭がいっぱいの佳代子には答案がもらえるというだけで久美子の態度には何も気が付かなかった。
次の日、佳代子はもらった採点済みの解答用紙を元に問題を解いていった。当然、問題は簡単に解けた。
(よし、これで90点いや100点間違いなし!)
佳代子は少し興奮して解答用紙を送った・・・・・
【ジ、ジ、ジージジ】
「あっ!」
送った後、少し冷静になったのか佳代子はあること思い出したのだ。
「私、最初の約束 破っちゃた。」
思わず出た正直な気持ちだった。
『どんなに間違えても構いません。あなた自身怠けるときもあると思います。それでも、構いません。しかし、これだけは守ってください。あなたに的確なアドバイスをするため、必ず自分の力で解いて、自分の手で答案に解答を記入してください。
それでは、はじめましょう!』
点数が欲しくなってとても大切なことを忘れていた佳代子。
大きな罪悪感に襲われていた。
【ジ、ジ、ジージジ】
「100点」
ファックス先生から採点された解答用紙が送られてきた。
そして、その用紙にはいつもたくさん書いてあるはずのアドバイスがどこにも書いていなかった。
100点のはずなのに佳代子には全く達成感がなかった。あんなに手に入れたかったはずなのに全然嬉しくなかった。
佳代子は何か大きな喪失感に襲われた。
そして、
「ごめんなさい!」
こんなに心から後悔したことはなかったかも知れない。
【ジ、ジ、ジージジ】
佳代子のもとに、ファックスが送られてきた。
それは、さっき100点を取ったはずの問題用紙と白紙の解答用紙だった。
佳代子は、すぐに用紙を手に取って、足早に机に向かった。
ゆっくり一呼吸した。
そして佳代子は初心に帰って、自分のしたことを反省しながら自分の力で解答した。
さっきやったばかりなのに。
答えを知っているはずなのに。
問題を解いていくといつものように難しく頑張らないと解けない問題ばかりだった。
それでも、佳代子はいつも通り問題を解いていった。
「終わった・・」
問題を解いて佳代子はファックスを送った。
【ジ、ジ、ジージジ】
佳代子はファックスの前から動けずにいた。
【ジ、ジ、ジージジ】
先生から採点用紙が返ってきた。そこには・・・・・・
佳代子は、勉強以外のとても大切なことを学んだ気がした。
おしまい