片目のネイビー
かなり昔の話になりますが、毛の長い真っ黒な子ネコがどこからかやってきました。
当時、すでに世話をしているネコが数匹いましたのですが、真っ黒で毛が長いネコはあまり見かけなかったのでめずらしく思ったのか、子供たちが飼いたいと言い出したため、仕方なく飼うことにしました。そして、目の色が青かったので、ネイビー・ブルーのネイビーと名づけたのです。
(ネイビーです。)
さて、飼ってから気がついたのですが、ネイビーは、それは、それはケンカ好きのネコだったのです。体は、どちらかというと小さいにもかかわらず、どんな大きなネコと遭遇しても、逃げることなく向かってゆくのです。
そのために、年から年中、ケンカに明け暮れ、体中、傷だらけ、顔も凸凹になっていました。もっとも、向かってゆく相手はネコだけで、人間に対して狂暴なわけではなく、普通の飼いネコとは変わりませんでした。
ある日のことです。どこかへ出かけて帰ってきたネイビーの顔を見てびっくりしました。片方の目の眼球に穴が開き、血を流していたのです。
おそらくケンカをしたときに、どういう加減かはわかりませんが、相手のネコの牙がネイビーの目に刺さったのだと思われます。
しかし、ネイビーは、人間だったら大騒ぎをするところを、意外と平然としていて、涙のようなものがずっと出ていたのですが、やがて、傷自体は治ってしまいました。
とはいっても、その眼は失明しているように思われましたし、もう一つの眼もやられたら、盲目になってしまいますから、もう、二度とケンカはしないようにと願うのでした。
こうして、その後は片目で生きてゆかなければならなくなったネイビーですが、そのダメージが大きかったのか、少しおとなしくなったように見えました。そして、今までのケンカ生活がたたったのか、あまり長生きはできず、2~3年で死んでしまいました。
今まで、うちで世話をしてきたオスネコは飼い主に似たのか、とても気が弱く、ちょっと強そうなネコが来るとすぐに逃げてしまったのですが、このネイビーだけは、どんな強いネコに対しても一歩も引かず、挑んでいったまれなネコであったので、今でもその時の思い出が鮮明に残っています。
ネイビーは、若い方々は、ご存じないかもしれませんが、まさに、片目でケンカ好きの「森の石松」ならぬ「森のネコ松」という名前がふさわしいようなネコだったのです。
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